エブエブ感想

「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」通称「エブエブ」の感想

何もかもうまくいかないADHDの中年女性が自身が経営しているコインランドリーの事業を拡大するために税務署に行ったところ、他の宇宙からやってきた自分の娘に襲われるというお話。

ま〜じでめっちゃよかったのでまだ観てない人ぜひ観て

以下感想。ネタバレ含みます。

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物語の終盤、主人公エブリンの娘、ジョイが「人生の中で価値のある時間なんて少ししかない」と言うシーンが印象に残った。ま〜〜じでそれな!と激しく同意して、どう続くんだろうと観ていたら、エブリンが「だから大切にする」と言って、ボロッボロに泣いた。

ジョイの言うこと否定せず、むしろ肯定していて、ありえないほど泣いた。

今まで、「人生とは素晴らしいものだ!」「価値があるものだ!」という価値観を周りの人やいろんなコンテンツに押し付けられることが多かったが、ずっと生きてきた中で思ってきた「価値のある時間なんて少ししかない」という考えをこの作品に否定されなかったのがすごく嬉しかった。

やっぱり私の考え間違ってなかったよね!!と、共感してもらえた気持ちになった。

つらいことを誰かに相談した時に「生きていればいいことあるよ」と言われることが多々あったが、圧倒的に辛いことの方が多くて、「生きててよかった」と心から思える時はほぼなかった。私には推しがいるのだが、推しと出会えて「この時代に生まれてよかった(違う時代よりはマシ)」と思うことはあったが、それでも「生まれてきてよかった」と心から思ったことはないかもしれない。

そして、「価値のある時間なんて少ししかないから、人生なんてクソだ」と思うことが多かったのだが、エブリンに「だから大切にする」と言われて、心がスッと軽くなった気がした。

今までも「価値のあることは少ししかないから大切にしないとね」と言われることあったが、今回それがようやく理解できた気がした。「完璧に幸せじゃなければダメだ」と思っていたが、「少しの幸せがあればいいよね」と、少し思えるようになった気がする。そう思えるようになったのは、タイミングや、その考えにたどり着くまでの前提の共有ができたなどの要因があるように思う。

また、今まで自分にとって価値のあるものごとを大切にできていなかったなと反省もした。生まれてきたくなかったという思いは変わらないが、色んな人に大切に思われながら生きてきたということは、たぶん間違っていない(と思いたい)ので、こちらも大切にしたいなと思った。

そして、「優しさで戦う」これがもう……号泣。今まで散々暴力で物事を解決する映画を見てきて、「やっぱり物事を解決するために最終的に必要なのは暴力…?」という結論を私自身が出そうとしていたところに、優しさで物事を解決するという表現をみせてくれたのが、本当に良かった。

暴力が正当化された世の中で悲惨な目に遭うのは「暴力によってやっつけられる悪」ではなく、「力がない弱者」が大半を占めることになる。この物語の1番のテーマとなった(と思う)この「優しさで戦う」というテーマが「優しくない人が多くて嫌だな」「優しくなりたいな」「弱者が生きづらい世の中は嫌だな」と日々思っていた私にとって、とても救いとなった。

毎日嫌なニュースが多く、世の中に絶望してしまうことも多いが、「より生きやすい世の中にしていこう」と考え実行してくれている人たちは存在している。この映画を観てそれを感じることができた。希望を持って、私も「より生きやすい世の中にしていこう」と考え実行する一員となりたい。

社会は変えられる。今までいい意味でも悪い意味でも変わってきた。無力に感じることもあるけれど、わたしたち一人ひとりには、一人分の力がある。私の一人分の力を、すべての宇宙に住んでる大切な人たちが生きやすくなるために使いたい。